警備の豆知識
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施設警備の事故事例を知って事故防止につなげよう

施設警備の事故事例を知って事故防止につなげよう01

施設警備は、会社やオフィスビル、商業施設などの契約先施設に常駐し、来訪者や従業者の安全を守る警備業務です。

施設警備業務のおもな現場は屋内ですが、それでも一定数の事故は発生しています。しかし、過去の事例に学んで対策を取り、危険に対する感度を高めれば、事故防止につなげられるでしょう。

この記事では、施設警備の業務遂行中に発生した重大な事故事例とその対策を詳しく紹介し、事故防止における教育や訓練の重要性について解説します。

警備業における労働災害発生状況

警備業においては毎年、ほぼ一定数の労働災害が発生しています。直近3年間のデータに見る警備業の死傷者数は以下のとおりです。

警備業の年間死傷災害数

  • 2021年 2,059人(うち死者28人)
  • 2020年 1,792人(うち死者28人)
  • 2019年 1,698人(うち死者21人)

出典:厚生労働省労働基準局「労働災害発生状況」

施設警備は、施設を対象とする他の業務形態とともに、警備業法上の「1号業務」と呼ばれます。1号業務は、路上の交通誘導などを行なう「2号業務」に比べると安全なように見えますが、両者の年間労働災害件数はほぼ同数で、2つ合わせて全体の約8割を占めます。

安全を守るはずの警備員自身が事故で死傷しないためには、十分な対策が必要です。

施設警備の事故事例

施設警備の事故事例を知って事故防止につなげよう02

厚生労働省の報告を参考に、施設警備中に起こった5つの重大事故事例を紹介します。事故の原因がどのように分析され、どういった対策が取られたかを見ていきましょう。

出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」労働災害事例

事故事例1.エレベーターの乗客を助けようとして昇降路内に転落

停止したオフィスビルのエレベーターに閉じ込められた人からの連絡を受け、対応中に発生した事例です。

停止階と表示されている6階へ、警備員とともに向かったビル管理会社職員が、非常解錠キーでエレベーターのドアを開けました。ところが、実際にはエレベーターは1階で停止しており、ドアの向こうを見ずに飛び込んだ職員は昇降路に墜落して死亡しています。

対応者の確認不足のほか、エレベーター故障時の対処方法を記した指示書がビル管理者の手に渡っていなかったことが原因と判断され、以下の対策が取られました。

  • 同じ原因でエレベーターが停止しないよう、制御機能を改善し、点検整備を徹底する
  • エレベーターに異常が発生した場合の、関係者の役割分担を事前に定め、対応手順を明確化して教育訓練を実施する

事故事例2.消火設備の点検時における酸素欠乏症

警備員が地下1階のボンベ貯蔵室で二酸化炭素消火設備を点検している際、手順を誤って二酸化炭素を噴出させたことによる事故です。

消火剤である二酸化炭素は1分ほどで他の部屋にも広がり、酸素欠乏のため3名が死亡し、2名が休業する事態となりました。

設備に関する情報や、点検の作業手順が作業者に十分伝えられていなかったことが原因だったため、以下のとおり対策が立てられました。

  • 電気系統・配管系統など設備の仕組みについて作業者に周知する
  • 詳しい作業手順を確立し、作業者に周知する
  • 作業指揮者を選任し、確認を行なわせる
  • 送気マスクなどの保護具を使用する

事故事例3.医療廃棄物を一時保管してガス中毒

医療滅菌器用エチレンオキサイドの使用済み容器約50本が、ビルの共用ゴミ捨て場に回収不可物として残置されていました。警備員がそれを袋ごと警備室に持ち帰って保管している間にガスが漏れ出て急性中毒となり、1名が病院に救急搬送された事例です。

エチレンオキサイドは、労働安全衛生法の特別規則で、管理すべき特定化学物質に指定されています。この事故の原因は、有害な薬品などが廃棄された場合の取り扱い手順がなかったことと、医療廃棄物の有害性についての認識不足とされました。

この事例で取られた、回収不可廃棄物への対応策は、以下のとおりです。

  • 不適切な廃棄を行なった医療機関に、廃棄物の適切な管理と処理について指導する
  • 対応手順書を作成し、警備員の作業内容を確認する
  • 接触時は換気できる場所で行ない、防護用品や密閉容器を使用する
  • ・保管は、人のいない場所で行なう

事故事例4.自動車を誘導中に搬器から墜落

自動車専用エレベーターの搬器上で、昇降操作をしながら地上とビル屋上駐車場を往復していた警備員が、屋上での車両誘導時に後ずさりし、隙間から墜落して死亡した事例です。

このエレベーターは、運転手が窓から手を出して昇降の操作をする前提で使用許可が出ていたもので、前後に囲いがありませんでした。人の乗用が禁止事項であったにも関わらず、警備員が搬器上に立って操作・誘導していた点に一番の問題があります。

対策は以下のとおり、安全装置の装備と安全管理の徹底です。

  • エレベーターの搬器の前後(出入口)に扉を設ける
  • 警備の発注会社は警備会社に使用設備の取り扱い方法を説明し、双方で安全作業について十分な打ち合せをする
  • 警備会社は作業者に設備の安全な使用方法について周知徹底する
  • 警備の発注会社は、設備の使用に際して現場の安全管理を徹底する

事故事例5.発電所構内を巡回中に海中に転落

原子力発電所に常駐する警備員が、自動車で岸壁付近を巡回警備しているときに誤って車両ごと海に転落し、溺死した事例です。

夕刻で悪天候のため視界が悪かったことが大きな原因ですが、岸壁付近に十分な高さの車止めや蛍光塗料の警告ラインがあれば防げた可能性があります。

また、照明の点灯や悪天候時の巡回中止が警備員個人の判断で行なわれており、ルール化されていなかったことも原因として挙げられました。

取られた対策は、以下のとおりです。

  • 施設の管理者は、海中への転落防止措置を十分に行なう
  • 巡回要領・手順を明確に定め、周知徹底する
  • 警備員への安全教育を実施する

警備での事故を防ぐには?

施設警備の事故事例を知って事故防止につなげよう03

続いて、過去の事故事例を重大事故の防止に役立てる考え方と、具体的な手法について解説します。

知っておきたい「ハインリッヒの法則」

ハインリッヒの法則は、アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが労働災害統計の分析結果をもとに提唱したもので、別名「1:29:300の法則」です。

この法則は、「1件の重大事故(死亡、大きな怪我)の裏には29件の軽微な事故(応急手当だけで済むかすり傷など)と300件の怪我に至らない事故(傷害や物損の可能性があった事例)がある」ことを意味します。

重大事故を防ぐためには、怪我に至らない事故の情報を把握し、対策を講じることが非常に重要であると説いています。

事故防止には備えが重要

ハインリッヒの考え方を実践する手法として、「KY活動」と「ヒヤリハット活動」があります。どちらも、警備員の安全衛生教育において重要な活動です。危険と予知の頭文字を取って名付けられたKY活動は、危険に対する感覚を鍛えるために、おもにチームで行なう訓練です。

作業現場のイラストや実際の作業現場から、現場に潜む危険や起こり得る事故を予測して対策を考え、立てた対策を共有・実践して事故を防止します。

KY活動を繰り返し実施すれば危険に対する感度が高まり、未経験の現場に対しても的確に危険予知できるようになるでしょう。

ヒヤリハット活動は、作業中にヒヤリ、ハッとしたものの事故に至らなかった事例を報告し、職場で共有して注意喚起するとともに、改善策の立案・実施に活用する取り組みです。有意義な活動とするためには、報告しやすい仕組みと職場風土が求められます。

また、ヒヤリハットの実例をもとにKY活動を行なうことで、より実践的な安全衛生活動につながります。

事故防止のためのSPD株式会社の取り組み

施設警備の事故事例を知って事故防止につなげよう04

一般に、安全の3要素は「人・物・管理」といわれますが、物や管理に潜む危険に気付くことができるのは結局「人」です。

SPD株式会社では、警備業務遂行中の事故を防止するために、「人」に関して以下のような取り組みを行なっています。

  • 設備機器に関する知識・技術の向上
  • 異常発生時に迅速な対応をするための日常的な訓練
  • 器具を使用した実践的な訓練によるスキルアップ
  • 防災技能に関する資格取得の推進
  • 危機管理意識向上のための教育

SPD株式会社は、施設警備をはじめとする各種警備事業を行なっています。施設警備の外注を検討している企業担当者様は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

契約先の施設に常駐する施設警備において事故を防ぐためには、過去に起こった事故事例を教訓に、警備員がスキルや危機管理意識を向上させていくことが大切です。そのために警備会社は、警備員が教育や訓練を受ける機会を十分に設ける必要があります。

SPD株式会社は、安心安全を支える「人」を重視し、事故防止に積極的に取り組んでいる警備会社です。警備が必要なシーンでは、SPD株式会社の活用をぜひご検討ください。

※建築・土木等に関連する交通誘導警備および貴重品・危険物運搬警備はSPD株式会社では取り扱っておりません。

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